今月の御点前

9月のお題「スーツの季節」 

 

モダン×クラシックの現在進行形

 今春のお題「スーツorセットアップ」のときに触れましたが、ここ数年アタシは毒が欲しくてねえ。雑誌もそうだけど、クリーンな情報ばかりじゃ飽きるでしょ。んな訳でファッションは適度に毒がないと面白くないと思うんですよ。それとご存知の通り、流行は概ね12年周期で繰り返すでしょ。もちろんそれは巷のトレンドだけではなく、今まで着てきた服の歴史、つまり自分だけのサイクルにも関係する訳で・・・。

アタシの場合、80年代〜90年代初め位まではデザインが施された服にどっぷり浸かっていたから、そろそろ毒がキレて、禁断症状に陥っている一面があるという訳です。でも決してシンプル&クラシックなものに飽きた訳じゃないから、組み合わせるアイテムはこれまで通りでいいと思うし、むしろ毒を採り入れることでシンプル&クラシックなアイテムが活性化されるし、同時に毒が巧く中和されて、トンガった服もこなれた感じに着こなせる、そう思うのです。つまりワードローブに毒を取り入れることは次なる新しいスタイルをつくるうえでは必要不可欠な要素だと思うのです。

それともうひとつ。数年前にアタシの出身である雑誌「男子専科=DANSEN」の復刊プロジェクトに携わったときコンセプトに掲げた年齢と服装は反比例すべきとも関係があります。このコンセプトはある程度の年齢に差し掛かると、これまで主体としてきたシンプル&クラシックの妙味が、年相応になり、お洒落の軸を越えて老けて見えるという現実を打破するための提案です。具体的にいうと、これまでのワードローブにパステルやヴィヴィッドなどのカラーものを取り入れる、またはディテールやシルエットにモダンな趣を取り入れて、装い全体を派手目にしませんかという事。恐らく親愛なる会員の皆さんのなかには”これまでトライしたけど似合わなかった!!”と、おっしゃる方も少なくないと察しますが、アタシもかつてそう思った一人ですから。しかし不思議なことに、50歳を超えたあたりからこれまで苦手としていた服や物が突然シックリと収まるようになったのです。これは前に「呟き」で紹介した故緒形拳さんが、遺した年齢が服を着せてくれるという言葉を裏付けるし、派手目な装いは結果として若返り効果を齎すのは確実ですから。つまりこの毒にはそうした若返り効能もあるとアタシは捉えているのです。

さて、アタシはこの秋、春よりも毒気の多いセットアップスーツを新調したので、ここでお点前として披露します。選んだのは川久保 玲氏自らがデザインを手掛ける「コムデギャルソンオム・ドゥ」のセットアップ。素材はポリエステル100%の製品染め。上襟にボタンがあるから留めればマオカラーのようにも着られるけど、基本は4つボタン段返りのなか12つ掛けで、3つのポケットはフラップが立体的に見えるようマチをつけ、ラペルはパッカリングしたような雰囲気で、肩はほんのりマニカ・カミーチャ(雨振り袖)仕様。シルエットはチェストを強調し、カマは浅く、浅めのサイドベンツだから、ベースはあくまでも英国調かと。セットアップのパンツはワンタックのペグトップ(キャロット)で、センタークリースを取り払っているから、さながらオバさんのおズボンのようだけど、履き心地が良く、ジャケットとの相性も面白いかと。

いつものように購入後、洗濯機で水洗いし、そのまま天日干ししてこなれ感と自然なシワ感を強調してみました。

ジャケットのデザインを活かすためには前ボタンを留めた方が絵になるんだけど、Vゾーンが狭いから印象がちと重たくなるのですよ。そんな訳で今回はインナーにボーダーのTシャツを挿してみました。足元はALDENのコートバンのローファーを組み合わせて定番のアズーロ エ マローネの色合わせにしてみました。またインナーはシンプルな白やブルーの洗い晒しのシャツ、「セントジェイムス」のバスクシャツ、「CAMCO」のシャンブレーシャツ、「VANDORI」のドレスTとも好相性かと。いずれにしてもアタシはモダン×クラシックが永遠のテーマだから、これがその現在進行形という訳です。

 

皆さんもこれまでとは違った気分で秋のスーツスタイルを是非楽しんでくださいね!!

投稿を楽しみにしていますよ〜。                                  

師範談

 

ジャケットとパンツ:今秋の新作/COMME DES GARCONS HOMME DEUX

Tシャツ:スーパーT/LANDS END

眼鏡:遠近両用の本鼈甲/大澤鼈甲

:定番のコードバンローファー/ALDEN

帽子:マイ定番/GINZA TORAYA ORIGINAL