師範の呟き【人】引野 実さん/ブルネロクチネリMD

今西さん同様、引野さんとのお付き合いもアタシが編集部に勤務していた1980年代に遡ります。たまたま年齢が同じだったから、言い換えれば会社は違えど、お互い新入社員同士だったという訳です。引野さんはその当時「テット・オム」の営業部に勤務していて、アタシは取材やサンプルのリースなどで度々社の方へお邪魔していたことで顔見知りとなったのです。さてこのテット・オム、当時のオーナー・デザイナーは加藤和孝氏で、加藤氏は草創期の「BIGI」でタケ先生の片腕としてパターンを引いていた方。つまりアタシたちが痺れた「傷だらけの天使」で修ちゃんがきていたスーツなどの型紙の多くは加藤氏が手掛けたと言われています。さてテット・オムがブレイクしたのは俳優の舘ひろし氏が、テレビドラマで着用したスリーピーススーツがきっかけ。館ファンが挙ってテットオムの扉を叩いたという訳です。この時代、引野さんは同社の営業部長に就いていましたが、百貨店のバイヤーが商談に来てもサングラスを外さないという徹底ぶり! ! そう常に舘ひろしバリのスタイリングで仕事をしていたのです! ! ()引野さんは同社退社後、大手アパレルで若手デザイナーブランドの立ち上げなどに携わった後、「ブルネロクチネリ」に関わり、現在は同ジャパン社のMDに。今や日本のブルネロクチネリでは欠かす事のできない人物です。写真は20223AW展にて。着用のスタイリングは秋の新作。話は突然飛びますが、引野さんはジョン・トラボルタバリに腰をクイクイと捻る踊りが上手い事も付け加えておきます。