師範の呟き【服】<ハンツマン>のグレースラックス

サヴィル・ロウの<ハンツマン>は、英国でもっとも高価なテーラーといわれた王室御用達の仕立て屋ですが、こいつはロンドンで仕立てたわけじゃありません。ハンツマンは日本を代表するフォーマルウェアのカインドウェアがライセンスホルダーで、そこで仕立てたものなんです。ライセンスとはいえ、ハンツマンの職人が日本まで着て、工場で指導しただけあって作りは本格的。そもそもライセンスを取得するとき、カインドウェアの社長自らノーアポで店を訪れ、情熱を傾けて説得したところ当主の許可が降りたというから、仕立てはもちろん心意気にも、いかにも英国らしさがあるのだと思います。スリーピースなのですが、ベルトレスのパンツだけでも気に入っていましてね。ブレイシーズのハイバックボタンが後ろに付いているのは正統なるサヴィル・ロウ仕様、インタックでストンと落ちるバギーシルエットの具合いもいいし、ウィンドーペーンの柄合わせもお見事。じつはこの生地、マルキシさんで着分を買わせてもらったカノニコのグレーフランネルなのですが、英国生地で仕立てるよりも雰囲気があって気に入ってるのです。しかし、最近少々服のほうがダイエットしやがったのか、お腹がきつくてはけやしない。仕方ないので散歩に励んでおるのです。