師範の呟き【物】<大澤鼈甲>のメガネフレーム
視力はいい方なのですが、リーディンググラスは持っていますよ。いま愛用しているのは谷中の大澤鼈甲さんのもの。レンズは遠近両用を入れています。
ここは日本のべっ甲フレームの第一人者でしてね。お店の2階に工房がありまして、ここで職人さんが全行程を手作業で作っています。最初に伺ったのは30年ほど前。当時120万円と聞いて慄いたことを覚えています。長く興味はあったのですが、メガネを必要としてなかったのでね。
2年ほど前に久方ぶりに再訪したところ、縁あってHPにも出演させていただくことになりまして、そのとき聞いたお話に惚れ込んでリーディンググラスを思い切ってセミ・オーダーしたんです。作って正解でしたねぇ。べっ甲フレームってのは、メガネフレームに最適な素材だってことがよくわかりました。
べっ甲は非常に貴重な素材で、フレームにするには3枚のシートを張り合わせるのだそうです。そうすることでやわらかく弾力性がだせるのだそうで、掛けているうちに人肌の水分と体温で温まって先セルがぴったりフィットするようになるんです。使っているうちに耳の角度に合ってきまして、装用感も軽くなってくる。10年ほど使うと水分が抜けてくるそうなので、オーバーホールして光沢を蘇らせるのだとか。まるでグッドイヤーウェルト製法の靴みたいですなぁ。