師範の呟き【物】<ヘルツ>のレザー鞄

ヌメのレザートランクは男のギアって感じがしますね。分厚くって無染色な革は鞄の素材では一番好きなシリーズです。ハンドクラフトの味が堪らないんですよ。

こいつは「HERZ(ヘルツ)」の革鞄なんですが、90年代、いまから20年以上も前に浅草の仲見世の鞄屋さんで買ったんです。海外ものかと思ってお店の方に聞くと、渋谷の革屋さんだっていうからおどろきました。当時はまだ小さなメーカーさんだったけど、いまじゃ有名なレザーブランドになりましたね。買った当時は3万8000円ぐらいだったかなぁ? 今、この値段じゃ買えないでしょうね。

蓋が切りっぱなしになってましてね、金足付きで自立するんです。大きさは横が40センチぐらいで高さは30センチぐらい、マチも15センチぐらいあるので結構入る。ちょっと重いけど、ちょうどいいサイズなのでよく持ち歩いてましたよ。アルマーニのスーツにも、ジーンズにも合いますよ。

すごく気に入っていたのですが、これをうちの犬が噛みましてね。革のニオイは犬にとって堪らないんでしょうね。歯型が付いちゃったものだから、仕舞い込んでたんですね。そこへきて数年前に犬も亡くなったものですから、ここ最近は使ってなかったんです。たまに出して虫干ししてますが、だからヌメ革の味出しがまだ未完成なんです。20年も使い込んだら、もっと飴色になると思うんですがね。

そろそろ出して、使ってもいいかなぁと思うようになりまして、メンテナンスをしてもらおうかと思ってたところです。昔、ヘルツにいた職人さんが知り合いにいまして、今、<アナロジコ>という革鞄の工房をやってらっしゃるのです。留め付けになってるショルダーストラップを、付け外しできるようにしてもらいたいのですよ。