師範の呟き【靴】＜ロイドフットウェア＞のマスターロイド「キングストン」

この靴はアタシに初めてグッドイヤーウェルトの着心地の素晴らしさを教えてくれた靴なんです。

それまでのグッドイヤーは、足が痛くて叶わなかったけど、この靴はマスターロイドのオーダーで、80年代当時6万3000円ぐらいだったかな。チャーチが3万円台の時代だからかなり高額。しかし、アッパーが馴染んでインソールが沈んだ頃には、足がスッと収まる感じが堪らない。以来、靴はグッドイヤーと決めています。

あとから解ったことですが、なにしろこの靴、エドワード・グリーン製なんですって。そう、当時のロイドフットウェアの高級ラインはエドワード・グリーンの工場を使っていたんですね。代表の豊田さんが日本人の足型を持って単身工場に乗り込んで、頑固な職人たちを説き伏せたんだけど、じつは工場を紹介してくれたのはアシュリー・ロイド・ジェニングス氏っていう人。

知ってる方もいると思いますが、ジェレミー・ハケットさんと一緒にハケットを立ち上げた共同創業者の人でね。この方、ご自身でもロンドンで靴屋をやってたらしいんだけど、仕事の面ではいいかげんなところもあったらしいんだね。ロイドフットウェアの立上げ当初は、彼の靴を作っていた工場を使ってたらしいんだけど、やがてめんどくさくなったのか逃げちゃったらしいんだ。去り際の彼が豊田さんに紹介していったのがエドワード・グリーンだという話。

マスターの称号を持つグリーンの職人の手製だもの、そりゃ履き心地抜群なわけ。いまのマスターロイドはクロケットらしい。こんなこと雑誌じゃ書けないですけど、靴に煩い業界人の間では常識ですよね。