師範の呟き【物】<ビギメンズ>のネクタイ

これは80年代、雑誌『HotDog PRESS』の仕事をしていた頃、カメラマンの佐野篤さんにいただいたものです。佐野さんは僕より10歳ほど年上で、とてもおしゃれな方でした。若い頃の仕事仲間には、妙な絆を感じるものです。

<メンズ・ビギ>じゃなくて<ビギ・メンズ>なのは、同世代の方ならよくご存知かと。74年から75年3月まで放映された『傷だらけの天使』は<ビギ>時代の<ビギ・メンズ>で、<メンズ・ビギ>として独立したのは75年10月のことです。<ビギ>の頃は香港にも卸先があって、ブルース・リーが買いに着ていたという話もあるほど。映画『燃えよドラゴン』の墓参りシーンでは、<ビギ・メンズ>のスーツを着ていますね。

マチ針が服地に刺さっている様子をそのまま柄にしているのもユニークだけど、このサテン地の色が時代を表してますね。太幅ですけど厚みはなくて、結んだらひらりひらりと揺れるんです。いい時代のネクタイですね。

でも自分ではしないでしょうね。こういうのって、面白いからとっておくもので、博物館があったら寄贈しますよ。ちょっとカビ臭いし、誰かにあげるのも憚られますから。古着屋に探してもらったトキオクマガイの「0123456789」っていうネクタイも、同じ箱に入れてとってあるんです。