師範の呟き【靴】<ヒラク>と<イサム メン>のシューズ

DCブームが最高潮を迎えた1980年代は面白い服が巷に溢れていました…とよく言いますが、単に「面白い」ものばかりではなかったと思います。レベルの高いモノ作りをしているメゾンは少なくなかったですからね。

そんな中から今回は靴を紹介しましょう。左のコインローファーは<HIRAQUE/ヒラク>というブランドで、亀革と牛革スエードのコンビです。恐らく今どこかの店頭に置いてあっても不思議じゃないほど粋な趣でしょ。デザイナーは佐藤拓さん。業界ではヒラクさんと呼ばれていましたが、一時期は多くの有名ブランドの靴を手がけておられたDC靴業界の第一人者です。<ヒラク>はプライベートブランドとして誕生したのですが、これがかなり唸るものばかりで。迷いにまよってコイツを手中に収めたと言うわけです。しかし残念ながら現在、ヒラクさんの消息は不明となっています。

右は<ISAMUMEN/イサムメン>のシューズで、デザイナーは後にパリコレクションにも参加した山田裕二さんです。山田さんは<ワイズ>、<フィオルッチ>、<ジュン>を経て、レディスブランド<イサム>のメンズ立ち上げに参画し、その後、<ユージヤマダ>のブランド名で東京コレクションにも参加されました。テーラードに造詣が深く、モダンなものからクラシックなものまで幅広い引き出しを持つ方で、この靴はアイビーブームの時に流行ったヴァンプをモダンにアレンジしたもの。こちらもかなりタイムレスでしょ。

いやいやこうして振り返ってみると80年代のものは「なんでもあり」。夢があっていいですねぇ。