師範の呟き【物】「ハートマン」のアタッシュケース
これは90年代の初め頃の品。日本橋の三越さんへ買い物に出かけた日の話。ここはインポートの良いものが揃うし、サイズも豊富に揃っているので、東京では押さえておかねばならない名店のひとつとして、今も頻繁に足を運んでいる場所です。
ある日、一階の鞄売場に人だかりがありましてね。覗いてみると鞄のデモンストレーションだったんです。そのブランドは「ハートマン」。1877年創業というアメリカの高級ラゲッジブランドです。元来、鞄嫌いなので「ハートマン。ふ~ん?」てな具合で、なんとなく眺めてたんですよ。
最初は、表面の革に何かの金属で傷をつけ、ハンカチで拭って軽く磨いたところ、ほんの数分で傷が消えたのです。なんでも革の自然な脂分が滲み出て、傷を覆うのだとか。
次に蓋を開けて左右に捻るように力をかけてみると、フレームが少し曲がるわけです。フレームが木製だから自然なフレキシビリティがあるというんですね。
さらに手に持ってみると鞄は真っ直ぐではなく、上部はほんのり外側へ、下部は足に沿うように自然に傾いている。この重量配分だからこそ、持ち歩きやすいのだそうです。
実はアタクシ、鞄嫌いとはいえ、ヌメ革のハンドクラフト製の品に根っから弱いんですな。いつのまかバナナの叩き売りか万年筆売りのサクラが如く、クレジットカード掲げて「買った!!」と雄叫びをあげていたのですな(爆)。
あれから10年くらいはよく使っていたので、革はいい色に経年しました。しかし、こいつが結構重いんですよ。それと背面に大きなスリ傷を付けてしまいまして、靴墨をつけて磨いたら、一部が妙な色味になってしまいました。そんなワケで只今、休眠中です。暇がある時にでも、手入れして綺麗にしてあげるつもりです。